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癒縄 命羅のロープヒーリング

緊縛~癒しの力と美しさを求める人へ

 存在証明9

存在証明9


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「そんなに、吊ってほしいなら、素直に言えばいいのに。」

 京様は優しく微笑んで、もう一度沙羅さんの頭をクシャクシャした。沙羅さんは相変わらず女の子の表情で、小さくなって京様の方に少し体を傾けた。京様が肩を抱いて、沙羅さんの顎を軽くつかんで、自分に向けさせると、おでこに、優しくキスをした。
 私は、なんだか、自分がされたみたいにやさしい気持ちになれた。二人の関係は私が思っていたのとは多分違うのだろう。どちらにしても、少し嫉妬もある。そう自分を感じているうちに、京様は沙羅さんを連れて、吊台の下に行く。沙羅さんはセクシーなOLさんみたいなファッションだったから、スーツの京様と雰囲気がすごく合っていた。


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京様は、縄を手にして、後ろから沙羅さんを抱きしめつつ、纏められた縄を解いた。そこから先は技術的な解説など私には勿論できないが、とにかく、何かが凄かった。一縄一縄をかけるたびに奥へと入り込んでいく沙羅さんの表情と、その体の震え、くねり、陶酔感。吊る以前にグラウンドで完全に何かのスイッチが入っていた。私は濡れた。高手後手で縛られて、床に横たわった沙羅さんの腰から脚にかけて螺旋状に縄がまかれたと思うと、すぐにおりかえして、いつのまにか大きな菱形で下半身が纏められていた。その後、更に、足首やつま先、足の指の間まで入り込む情縄。私の五感を超えて、脳の奥の方、いいえ、魂の奥の方へ縄目とその光景が締め付けるように入り込んでくる。沙羅さんの表情の妖艶さはとても言葉では表現のしようがなかった。


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朱利さんは平然と見ていたがきっと、場慣れの問題だろうと思った。ここには縄の熟練者、SMの上級者たちがきっと沢山来るのだろう。私はわずかに、痙攣するように震える沙羅さんの右足の親指を見ていた。床から、一気にあっという間に、沙羅さんが持ち上がった。原理はその時の私には到底分らなかったが、とにかく感動した。吊り上った沙羅さんに京様が向けるやさしい眼差しや、耳元で何か囁く様。京様が服の上から握りつぶすかのように沙羅さんの胸を絞る。声、声、声。喘ぎなのか、小さな悲鳴なのか、歓喜なのかわからない声を、一体どれくらいの人間が聞いた事があるだろう。私は、初めて聞いた。京様はその後、何度か、沙羅さんをつまんで、声を出させて、やがて、縄を足したと思ったら、空中で、沙羅さんが仰向けから、横向きになった。正直、芸術だと思った。今まで見た、どんなポールダンスよりも、マジックショーよりも、サーカスよりもアートで、鮮烈で、しかもエロスが介在していた。なによりも、二人が一つの世界で、まるで公開の性交をしているかのような一体感を感じた。

 私は自分が震えている事と、濡れすぎている事に気づくのには大分時間がかかった。


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 右側を上にして横向きに吊られている沙羅さんは、右腕と腰の右側と右足の太ももで空中で吊られている。京様が右足を天井方向にまっすぐにのばして釣り床のカラビナへと足首を固定する。ちょうど床でエアロビクスのように片足だけを上に最高に持ち上げたような形になったと思った。そこから京様は右腕の縄をゆっくりとはずしていった。沙羅さんの上半身がゆっくりと下向きに下がっていくと、右腰を支点にして、沙羅さんが、逆さ吊りになった。左脚は折りたたんで、膝下を切られているかのようにまとまっている。何回も回された縄がそう見せている。京様はその纏められた左脚の太ももにハンディーマッサージャー、所謂、「デンマ」的な、小型のものを結わえつけた。沙羅さんが頑張って脚を閉じると、その振動が花の芯にあたるようになっているようだ。

「オナニーしてろ。」

 ぞくっとするような、低音の優しい声で京様はいい、吊台からはなれて、私の向かいに座りなおした。沙羅さんはOL風のブラウスとタイトの黒いミニスカートで空中に逆さに吊られ、自分の脚の付け根にあるその震える機械を何度も花の芯に押し当てて声を出し続けている。他にお客さんも5人ほどいて、見つめ続ける人もいる。勿論、まったくかまわず話し込んでいる人たちもいる。私は、わからなかった。京様と話すべきなのか、素直に、その沙羅さんの痴態を見続けていいのか。何分も迷ったまま、沙羅さんを見ている。私は結局、見続けていた。沙羅さんの声のトーンが高くなり、音量が大きくなり、京様と朱利さんの会話に割り込んだ。

「逝ってもいいですか。」

 店中に響く大きな、メスの獣の声がした。京様はお酒を口に運ぶと静かに言った。

「五回は逝け。」

 私は、結局、一言も話さず、沙羅さんが脚を閉じたり広げたりしながら、五回逝くのを見つめていた。自分の下半身の疼きを抑えるのが、これほど難しかった事はなかった。京様が沙羅さんを降ろしている時に、トイレに入った。


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 初めて、バーで、そのトイレで声を殺して、花の芯をいじりまくった。脚を何度もつっぱらせ、トイレの壁に足をおしつけて、服の上から胸の突起を自分でつねりながら、花芯をまさぐった。トイレの中のイベントのポスターや、縛りのあるフライヤーも気になったが、先ほど見たあれが、とてもうらやましくて、自分が抑えられなかった。花の奥に中指と人差し指をぶち込んでこれでもかというくらい搔き雑ぜた。何度も声が出そうになったが、歯をくいしばって堪えた。左の胸の突起がいたくなったので、左手は右の突起に移動して服の上から捻り上げた。私は何度達したかわからなくなったが、重大な事態が起きていた。私は失禁していた。下着は膝まで下げていたので問題はなかった。元々違うもので濡れていたし。問題は、スカートの臀部と便座の蓋。そして床。ふらふらしたが、立ち上がり、トイレットペーパーで蓋と床を拭いた。湿った下着をはくとヒンヤリした。どちらにしても下半身にあるワンピースの模様である白い花が少し透けていて、オレンジの生地もあからさまに色が濃くなっていた。
 しかし、結局トイレにそんなに長くはいられない。すでに五分くらい以上はいたかもしれない。私は、諦めて、トイレを出た。みんなが私を見るような気がしたが、誰も私を見なかったし、トイレから出てきた事自体気付かないようだった。私は濡れたままお店のソファーに座ることが悪くて、カウンターの恥っこに立って、京様が沙羅さんの縄をほどくのを見ていた。ゼネラルマネージャーである鋼さんがやって来て、隣に立って話しかけてくれた。


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「京さんの縛りは素敵でしょう。」
「はい、とてもドキドキしました。」

 私は自分の尿の臭いが鋼さんに届かないか不安でしょうがなかった。そのせいもあって、気持ち声が小さかったかもしれない。

「あー、声、小さいねん。」

 鋼さんは大阪出身なのでやさしいニュアンスで声が届き、私は少しほほ笑んだ。

「うちは、こういう店だから、多少はコスプレらしき衣装とか、そうでないシックなドレスっぽいものとかあるんです。」
「?」
「着てみませんか。」

 私は色々な意味で答えに窮した。そして鋼さんを見た。

「いや、いいんです。そのままでも十分セクシーやと思いますわ。でも、せっかく来たんだからどうでしょう。来てみたら。」

 私は真意をつかめないまま、鋼さんに衣装のある入り口付近のクローゼットまで連れていってもらった。

「これなんか、いいとちゃいます?」

 鋼さんは確かに丈は短めだけど、普通に街中で見かけるような素敵な黒のワンピースを差してくれた。

「えーと、ハグしましょう。初来店記念に。」

 何もいう暇もなく軽く抱きしめられたと思ったら、

「ええですよ。これ、今日、そのまま着て帰ってください。」

 その、耳元での優しい囁き。私は恥しかった。それから嬉しかったのかな。そして店の服を着て帰ることが、京様からみて怪しくないかを考えた。

「まかせておいてください。ちゃんと自然にそうなるようにしますから。」

 その後、席についた私は膝上に服を置いて座ったが、鋼さんはジントニックと見せかけた炭酸水をわざと私のワンピースにこぼしてくれた。
 京様にトキメイタくせに、鋼さんに惚れそうにもなった。それから、京様と沙羅さんがもどってきて、ニコニコ話している時になんだか涙が出てきた。淫と情と優しさと強さみたいな、ミックスした感情が胃から食道を通ってこみ上げて来て、喉で詰まって、鼻の奥から涙腺を経て、涙となったのだろう。SMの世界感とそこにいる人達の優しさや気遣い、洞察力、色々な事に触れた夜だった。間違いなく、沙羅さんと京様の間にも、朱利さんの会話にも、鋼さんの気遣いにも、私に話をふってくれる京様の話術にもあった。それはあったのだ。あの日の絵本の中で読んだ事に属する何かが。


――二年くらい前に誰かからもらった「絵本でわかるイエス様」っていうのを読んで、きっとその感動でずっと泣いていた。人間の罪を全部背負って天国へ帰るなんて、ふつうはできない。すごい。すごいイエス様。涙がでます。

 多分、私は愛される事ではなく、愛することを見つけたのだろう。



1 Comments

さおり  

濡れました

トイレでしたくなってしまう程のその淫美を思い、自分の中も満ちてきました。続きがとても楽しみです。蜜柑さんも素敵ですね。個人的にはナクさんの思いの方が好きです。

2014/04/02 (Wed) 13:41 | EDIT | REPLY |   

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