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癒縄 命羅のロープヒーリング

緊縛~癒しの力と美しさを求める人へ

 存在証明第15話

存在証明第15話

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 天野さんから電話が来たのは、もう蜜柑の死んだ理由について、諦めかけていた頃。蜜柑が旅立ってから2週間くらいが過ぎていた。

「京君、今日は時間あるかい?」
「珍しいですね。天野さんから電話もらうなんて。」
「・・・・・うん。私ね。見つけたんですよ。・・・時ちゃん、あ、蜜柑ちゃんのブログらしきものを。」
「え、ブログですか。」

 自分はその場にいた沙羅をつれて、すぐに天野さんのアパート、つまり蜜柑の隣の部屋をめざした。ノートパソコンも一応持ってきていた。天野さんは部屋にいれてくれると、すぐに、部屋のパソコンの画面を指差した。

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「時の手記、か。」

 蜜柑と書いていなかったのは、必要以上にSMの業界の人に読まれないように彼女なりに配慮したことだったのだろう。沙羅の名前も、天飛京の名前も、ナクの名前も偽名でつづられていた。涙がでた。

―――――もしも、幸せに頂点があるなら、きっと今日だと思う。最初はとても不思議だった。他に奴隷がいる男性に仕えるなど、自分がどうかしたのかと思った。でも、貴方は私の心を救った人。幼い頃、たった一つ、私が支えにした本を書いた人。どうしても、どうしても、どうしても、愛してしまった。たとえ、有名な緊縛師で、貴方が何人の女性をどこで縛ろうとも、どんなショーをやろうとも、私以外の誰とプレイをしようとも、貴方から離れられなかった。先輩奴隷のサキさんと二人で出掛けられると、胸の奥からすべての内臓が胸骨を突き破って出てきて、爆発してしまいそうなくらい苦しくなった。

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貴方の縄は私の中にある淫美な蠟燭にいつも火を灯す。その縄をサキさんに掛けるのだ、縛るのだと思うと、世界が歪んで見えた。私以外の人が貴方の縄を受け、鞭を受け、全身が炎につつまれるような羞恥を煽るような命令をされ、実行し、貴方を楽しませる。地獄だと思う。私だけのものだったら、どれほど幸せだろう。貴方の命の雫を彼女が飲み、私はカフェで一人、小説を読んで過ごす。貴方の笑顔を沢山見る彼女がいるのに、私は知り合いの書いたSM小説を読んでいる。アーモンドフラペチーノの味など、どこかに飛んでしまっている。小説だって、読んでいるのかわからなくなる。貴方は彼女の頬を優しく撫でながら、いえ、頭をポンポン優しくたたきながら、良くできたね、とか言うのでしょう。私は一人で貴方からの連絡をただ待っている。サキさんにはかなわない。仕事もサポートしているし、女性としても彼女のほうがよほど魅力的だと知っている。しょうがない、しょうがない、しょうがいないんだ。私は貴方のほんのちょっとの隙間を埋める玩具。それだけでも光栄なはず。でも、くやしい、どれだけ尽くせば、私をもっと見てくれるの。どれほど貴方に思いを伝えたら、私だけを見てくれるの?

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 ありえない。貴方は愛されているということが言葉では伝わらない人。だからSMをしている。知っている。私はきっと彼女の半分も貴方を満たせないのでしょう?くやしい、くやしい、貴方を閉じ込めてしまいたいくらい、くやしい。

 どうして、私が貴方の尿をいつも水筒で持ち歩いているか知っていますよね。貴方の命令ですらないのに。私はサキさんがしないことをしたいのです。お昼ご飯を食べて、歯を磨く前に、少しづつ貴方のを飲むの。公園で一人で飲む事もあるし、会社の給湯室でゆっくり飲むこともある。一度、凍らせたそれは、なんだか少し薄いような気もするのですがそれでも貴方を直に感じます。もらった日の体調のことや、食べ物の事を思いながら、貴方の体の一部になった気がするの。そう、肝臓や腎臓に。膀胱だっていいの。貴方の一部になるの。貴方の使った、ミミカキの綿棒をもらうのもそう。それを舐めながら自分を慰めている私を感じてください。見てくださいと思うの。萌え上がって止まらない快楽の渦は永久に私を離さない、って思う程、上り詰めるの。私だけを見て。

 私を愛してください。どうか私を愛してください。





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 なんて思っていたのです。でも、違いました。サキさんと初めて同じ部屋で3人でした時にわかりました。私はサキさんに劣るものでもなく、勝ものでもない。彼女は、私を愛してくれていました。きっと、彼女の前の奴隷さんがそうしていたのでしょう。まるで、その人がいなければ世界が滅んでしまうというような、気持ちのこもった彼女の愛撫と責めと労り。なにより、キス。私は言葉ではなく、プレイで愛されている事がわかる人間になったのです。貴方のおかげです。貴方がいない時、サキさんは何度も何度も私をデートに誘ってくれました。貴方の許しがなければ、二人でホテルに行くこともありませんでしたが、間違いないく、対等の立場で彼女は私を愛してくれました。あらゆる悩みをきいてくれて、泣けば抱きしめてくれて。時にはサキさんに対する嫉妬の話すら、正面から向き合ってきちんと聞いてくれました。勿論、私もそうしました。でも怒ったりも、なだめたりもしないサキさんを不思議に思いましたが、あの一言が忘れられません。

「ねえ、みーちゃん。どうして、同じ主に仕える私が、貴女を愛さないでいられるのかしら。私がもしも死んだら、貴女の他に主を任せられる人なんているのかしら。」
「・・・・・」
「だから、貴女はとても愛おしいの。私と同じように主を敬って、好きでいて、切なくてつらくて、でも一緒にいると楽しくて嬉しくて。そんな同じ想いを私達以外の誰が分け合えるのかな。私は、貴女がいなくなったら、多分、悲しくて、胸が潰れるの。まあ、もともと潰れるほど胸は大きくないけどね。」

 そういって小さく照れ笑いしたサキさんは、私の中の氷山を一気にとかしてしまったのです。そして、何度か二人でからむうちに、本当に彼女は私の彼女や彼氏でもあるかのように愛おしい存在になってしまったのです。

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 だから、ナリちゃんを見たとき、一目でわかりました。この子は私と同じだと。ナリちゃんの生い立ちを聞いて、余計にわかりました。どうしても威圧的で強制的な母親。そこから感じられたのは愛ではなく規律や罰則だった事。愛されてはいたのでしょうけれどもそれを上手く表現できない母親。感情を押し殺して、育たなくてはならなかった、もしくはそうすることが唯一の自分を保つ道だと思ったっていう話。父親は他の女のところへ入り浸りで、年に数回しか家にいないという環境。愛情から隔絶された母親の溺愛は愛を与える方ではなく、子どもから愛を抽出する方にむかったのだと感じました。この子も願っているのだと。自分を愛して欲しいと心から願っているのだと。居場所がどこにもなくて人との距離をとりたくて、しょうがないからモデルをやって有名になった。余計な人が近寄って来たときに叩き伏せるオーラを作らざるを得なかったのだと。ナリちゃんは七歳の時に近所の公園で大学生くらいの男の人にトイレにつれこまれて、女性自身をさわられたり、舐められたりしたのです。そしてまだ、小さな口で男性を受けなければならなかった。時には、近くのマンションの非常階段や、広い公園の林の中、全裸にされて、幼いながらに上り詰めるような感覚すら覚えさせられました。でも、唯一、素直に話せるはずの母親には話せませんでした。怒られるのは自分だと考えるようになっていたから。責任の所在という概念がすべて自分が悪いという方向に固定されていたのです。それはマゾにもなるでしょう。やがて、近所にそういう不審者がいると噂になり、警官のパトロールが厳しくなりました。そして、大学生らしいその男性は彼女の前には現れなくなったのでした。でも、彼女は、それが記憶に深く残りました。親はあてにできない。自分はどんなことも自分で解決しなくてはならない。自分のせいだからと。中学に入ると、ちらほら処女を失う友達もでてきて、彼女は、その大学生を探して近所を歩いたそうです。もう一度されてみたいと。彼女は、普通と一般的にいわれている性のラインから少し違う道を歩いて来たのでしょう。
 だから、私は愛してしまった。サキさんが私にくれたように、ナリちゃんに溢れる程の愛をあげたかった。そして、私とサキさんを愛して欲しかった。だから、女三人で楽園に行った時に言われたあれは素敵だった。

「私、お二人と付き合いたいくらい好きなんです。サキさんの唇やミーさんのつま先なんかを思って自分を慰められるほどに、恋してるかもしれません。あの方は別ですけど。」

 私は、自分を愛してくれる人を二人見つけた。そして愛している。貴方はそう言葉では言ってくださらないけど、きっとそういう事なんだと思っています。なんて幸せなんでしょう。

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ねえ、ママには聞こえるかな。今ね、気絶するほど幸せ。この先、これ以上幸せな時期がくるのかな?
 ママは、もしかして、あのクリスマスの日、幸せだったのかな。私が頑張った通知表をもってきて、一緒にケーキたべて、クリスマスの歌を歌って。トランプしてとか考えてたのかな。あの日、幸せで、幸せで、幸せで。




 だから、ピリオドを打ったの?


 私は、きっとこの先も沢山幸せがあると思うの。もしかしたら、今よりもずっと幸せになるかもしれない。SMを通してのファミリーがいて、アマノッチの料理やお酒や楽しい話があるうえに、きちんと仕事も出来て。でももっと幸せがあるかもしれない。大好きな人が出来て結婚するとか。は、幸せなんだろうか。ピンとこない。私がやってない幸せは。世界の恵まれない子供たちにほんの少しでも食べ物や、衣服や住むところをプレゼントしたいことなの。だから。今、幸せだから。私。みんなに感謝して、ママの処にいこうかな。もう一度、卵焼きをやいて、ラーメンつくって、ママに褒められたい。私の保険金でたくさんの命が救われたりしたら、ママはほめてくれるかな。ね、あの方は・・・・・きっと泣いてしまうと思うの。私、知っている。結婚もしてくれないし、私一人にも絞ってくれるわけもないけど、あの方は、貴方は、貴方は、気絶する程、







 私を愛している。






 自分の泣き声なのか、沙羅の声なのか分らなかったが、少なくとも三人くらいの声や鼻水をすする音がしていたと思う。自分が叫ぶなど思いもしなかった。広くもない部屋で自分の叫び声がこだました。多分、バカ野郎とか、そんな大声だった。

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続く

************総ての画像の無断転写をお断りします*************


4 Comments

ゆか  

泣きました

沢山なきました。私もこんな風に思いたい、思われたいと。
1度お会いしてみたい、とか、思ってしまいました。ごめんなさい。

2014/09/05 (Fri) 21:02 | EDIT | REPLY |   

さおりん  

ピリオド

幸せの、その先が怖い。わかります。
同じM女として、幸せな時ほど先の不安を思って落ちてしまう。だから、余計に主様に会いたくなるんですよね。

2014/11/17 (Mon) 20:43 | EDIT | REPLY |   

命羅meira  

Re: ピリオド

さおりんさん。わかりますか。幸せなんですねM女さんとして。素敵な主様とがんばってください。らぶ


> 幸せの、その先が怖い。わかります。
> 同じM女として、幸せな時ほど先の不安を思って落ちてしまう。だから、余計に主様に会いたくなるんですよね。

2014/11/20 (Thu) 18:25 | EDIT | REPLY |   

命羅meira  

Re: 泣きました

ゆかさん。返信おくれました。コメントありがとうございます。
あー、札幌の縄会とかでは会える可能性あるんですけど、どこに住んでいらっしゃるか謎ですので
なかなか会えないと思われますね。
私でなくても、きっと素敵なSさんはみつかりますよ。
悩みとかあったら、相談してくださいね。


> 沢山なきました。私もこんな風に思いたい、思われたいと。
> 1度お会いしてみたい、とか、思ってしまいました。ごめんなさい。

2014/11/20 (Thu) 18:28 | EDIT | REPLY |   

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