縛るよ。
縛る。そう縛る時、毎回最高の気を込めて縛る人もいるだろう。
でも私は違うらしい。
相手によっては、まったく事務的に安全のみを考慮して縛る事もある。
でも、この子は違う。
いつも抱きしめる代わりに縛っている。
勿論、抱きしめたりもするが、もっと強く抱きしめたいという思いを、
きっと縄に流し込んでいる。
床で縛り終えてから吊るのにも意味がある。
多くの吊りがそうであるように、意味のない吊りなど
練習か戯れなのだろう。
時にはそれも大事だろう。
だが、床から一気に上げる吊りをするときは
吊りあがる前に、この子の呼吸や震え、状態や気持ちを覗き込むためだ。
気脈をより太く通じさせる為でもあるだろうか。
横向きで少し上半身をひねった、斜め吊りになるように計算して上げよう。
この子のヒップラインとウエストラインは私のお気に入りの箇所でもあるから。
上がったら、脚をまとめて、気持ちの強さを鞭で伝えようと思う。
この子自身が私の愛用の鞭でなくては嫌だと言った。
その白いバラ鞭が空気の中をたゆたう様にこの子にあたる。
他に、何がいるのだろう。
この瞬間で、本当の何かはきっと伝わっている。
ただ、臨時でやったショーなので時間制限もあり、私自身がブレーキをかけていた。
お前が大切だと、私の鞭は伝えきれただろうか。
斜めから、平吊りに展開する途中。
垂れた縄が何故か、この子に似合っていた。
互いにすべてを賭けられない相手であるからこそ、
そのひと時の美しさを楽しめる時もあるのだろう。
命羅