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癒縄 命羅のロープヒーリング

緊縛~癒しの力と美しさを求める人へ

 ガンダ○な気分か?紫電。

ずっと昔な。2008年頃にミクシーにのっけた2次的擬似小説みたいなやつだ。
好きなやつは好きな話。読んでみろ。


「ペンを持つ者」

カイ・紫電は少し前まではホワイト○ースのクルーで、ガンキャノ○というモビルスーツのパイロットだった。一年戦争を生き抜き、アムロやブライトなどと共に戦いぬいた。そして、サイド5で最も読まれている電子新聞の記者として今は生きている。

 薄暗いカウンターの最も奥で、大きめのサングラスをした綺麗なブロンドの男が茶色の液体のロックを飲んでいる。濃いグレーのスーツにブルーのシャツ。黒に白のラインが斜めに3本入ったシンプルなネクタイをしている。煙草が似合いそうだが、吸ってはいなかった。

 カイは彼と視線があうと、入口で軽く頭を下げて、ごく自然に彼の横まで歩き、隣にすわった。バーボンソーダを注文する。

「カイ・紫電。ホワイト○ースのクルーで、ガンキャノ○のパイロット。そして今は新聞記者で、妹の行方を知る数少ない人物。」

「貴方に、こういう形で会えてよかった。一年前に宇宙なんかでそういう風にあっていたら、俺はここには存在していなかったでしょうからね。」

「ふふふ、まあ、その時代はもう、過ぎ去った。新しい淀んだ風も近くまで来ているが、そんなことを話す為に君を呼んだわけではない。」

 カイは運ばれてきたバーボンソーダを一気に半分程飲み、グラスを下ろした。氷の音がした。

「なんと、呼べばいいですか。まさか当時の通り名で呼ぶわけにも行かないでしょうし。本名はここで使うには重過ぎるでしょう。」

 彼はニヒルに微笑んで、カイを見た。そしていった。

「クワトロでいい。今は、連邦軍の中尉だ。」

 カイは自分の目が大きく見開かれるのを感じた。


「連邦の仕官?貴方が?」

カイは耳の機能を疑ったが、隣の男は真面目な顔でグラスを傾けた。

「カラバって組織が地球にあるだろ。あそことブライト君をつなげる役目を君に頼みたい。」

カラバは同じくホワイトベー○のクルーでガンタン○のパイロットだったハヤトが作った組織だと、カイは聞いていた。最近、連邦のハイマンという准将がエリート部隊を作り上げて何かをしようとしているらしいが、ハヤトはそれが、自分達にとって仮想敵であると考えているらしかった。---自分だってニュータイプのアムロの声があの時聞こえたはずなのに。カイは人の革新というものにはやや否定的だったが、アムロやララアの逸話を後に知るたびに、確かにそれはあったということを苦々しく思うのだった。

では、何故、自分は覚醒しなかったのか。分からなかったのか。
あの時、後部の開いたデッキの格納ドアから爆風が入ってくる事を。
そして、


ミハルが空高くから地にむかって命の塊として落ちて行くことを。

自分がニュータイプなら、絶対にミハルを死なせはしなかった。
今は、自分が育てている彼女の兄弟達をあれ程悲しませる事もなかったのにと。

「俺はね。クワトロ中尉。そんなことよりも、戦争自体がおきないように記事をかきたいんですよ。何かの組織の為とか、個人の主義の為とかに利用されて戦う兵士の目を覚ましたいんですよ。」

クワトロは黙って、サングラス越しにカイを見つめた。

「カイ・紫電。思ったよりまともで、骨があるんだな君は。」

カイは背中に凍った熱風が流れたような音を聞いた。

「よしてください。貴方程の人に言われるようなものではありません。それより貴方はどうなんです。貴方が立ちあがれば、この世界をあるいは纏め上げることも可能なのではないですか。故ジオン・ダイクンのその血で。」

カイは自分が口走ったおろかな台詞に戦慄を覚えた。
一人の同じ時代を生きたものとして会おうと決めていたこの男に、自分が知らず知らずのうちに世界平和などと言うものを期待していたからだ。その旗手としての、シャア・アズナブル。

「薄ら寒い事を言わないで欲しいな。地球圏が一つになるにはもう少し時間がかかる。そしてそれは私などの役目ではない。」

カイは沈黙してカウンターの上のバーボンソーダを見た。氷がゆっくりと溶け出して、グラスの中で崩れて綺麗な汚れのない音を出した。

スタンダードジャズの本当に初期の頃の「枯葉」という曲が流れ、店内はとても静かになっていた。

「貴方の聞きたい事は、、、、、セーラさんの行方ですか?」

「いや、違うよ。そんなことは調べればすぐ分かるし、彼女はある程度有名になったから、隠れる事もそうはできない。私が君に会いたかったのは、単に、カラバの事を伝えて欲しかったからだよ。」

「ティターンズ、、、でしたっけ。連邦のバスク・オムがブイブイいってるあれでしょう?」

「らしいな。」

クワトロは静かに左の口元に笑みをためて、また普通の顔に戻った。

「また、戦争がおきると? そう考えていますか?」

「当然だ。この情勢でおきないほうがおかしい。ハマーンや、エギーユ・デラーズがこのまま奥地に引っ込んでいるとは誰が考えても、ありえないだろう。」

カイは怒鳴った。

「だから、だらか貴方なんでしょう。貴方なら奴らをまとめて、もう、戦争で人の死なない世の中を作れるはずだ。俺の恋人のように、戦艦から落ちて、地面に叩きつけられて、ぐちゃぐちゃになって、四肢がちぎれて、脳が飛び出て、、、、あんなのは、、もうたくさんだ。」

ジャズの音さえ消えたようにクワトロは思っただろうか?
店の誰もが一言も話さなかった。


クワトロは本当に優しく、静かに話した。

「呼びかけが有効ならそれをやるのが君の指名だろう。私には、他にやるべきことがある。アムロやブライト君達とな。そして、それはそんなに長い時間でもないだろう。私はいつかまた違う義務に目覚めてしまうだろうからな。」

カイにはクワトロが何を言っているのか分からなかった。

「貴方はなにを、、、」
「いいんだ!」

クワトロはそう強くいうと、カウンターに大きな数枚の札をおいて、振り返りもせずに店を出て行った。

カイは、自分の席で、黙ってタバコを吸った。最近吸い始めた。
口の中が苦くなり、自分の言った事が夢物語であることを、また思い出した。戦争がなかった人類史など見たこともないのだから。
だが、それを求めずにミハルの手の暖かさを思い出す方法はなかった。


カイ・紫電は小さく呻き、グラスに水滴が落ちた。



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